ここは地獄?ひぃひぃばあちゃんに会うの巻【6話】
ここは地獄か、極楽か!?
素順ばあちゃんが会いたがってる。そんな気がして訪ねていくことにした。目を閉じて、素順ばあちゃんのところへ連れていって~と、お願いしてみる。
ぼんぼりのような提灯のような明かりが灯る、空の階段を上っていく。星がきらきらしている。
そして、星空のスクリーンにいろんな場面が映し出される。嵐の海。ちょんまげの男性。昔の商家の台所。若い娘、若い男、子ども、坊さん。
そして、浜辺。静かに波が打ち寄せる浜辺。それを見たとき、瞬時に私はワープした。
暗い部屋。相変わらず、波の音が聞こえ続けている。そんなに広くはない。4.5畳か、6畳か。この部屋に素順ばあちゃんはずっと座っているようだった。
ばあちゃんの前には長火鉢。白髪の髪で曲げを結い、グレーの着物をきたばあちゃんは、お歯黒をしていた。
この前、ミスターが霊界は案外に不自由で、情報が届かないと言っていた。確かに…この部屋にはTVもなければ、電話もない。明治の頃から時が止まったような部屋だった。
そして、ここは地獄なのか? 天国なのか?
鬼はいないし…、血の池もない… が……
暗いんだよね。なんとなく。そして、ちょっと寒い。
地獄なのかもしれないなぁ…と、ちょっと思った。
ひぃひぃばあちゃんとついに会ったぞー!
「素順ばあちゃん」と声をかけると、ばあちゃんは目を見開いて「おお、おお!」と声にならない声を出した。
「おお、おまえがそうか? 孫の林太郎の娘の十代子の、その娘というのがおまえか?」「そうです。はじまして」というと、すでにばあちゃんは泣いていた。
「わしはなぁ、ただただ店の再興を願っておった。それだけじゃ。自身に霊力があるなどと、大それたことは思ったことはないが、不思議とわしの願いは神様によく届いた。わしが祈ると、願いが届いて大勢の人が喜んだ。
しかし、あるとき人の不幸を願ってしまったんじゃ。恨みを晴らしたいというその人に同情して、その人をひどい目に合わせた人にバチが当たることを願ったんじゃ。」
えっ、素順ばあちゃんって、霊界仕置き人??と、私は一瞬思ったが…。
ばあちゃんは、もう自分の話に夢中で、相変わらず泣きながら話を続けていた。
「わしの願いはよう効いた。バチが当たることを私に依頼した人は、とても喜んで、わしにお金をたくさんくれた。こんなふうに金を稼げば、店が再興できると思ってしまった。
そこから、わしの不徳は加速度を増し、こうして、この暗い狭い部屋から出ることもできん身となったんじゃ」
ばあちゃんは、さらにオイオイと泣きながら、話を続けていった。
もう、涙と鼻水で、顔はくちゃくちゃだった。
やがて、わしの不徳のせいで、息子の乗った船が沈み、残った家督の全てを失ったことを知ったときは、命を絶って息子に詫びたいと思うたがのう・・・、命を捨てることもできずに、もんどりうつほどに自らの罪を悔やんだもんよ。」
と素順ばあちゃんは力なく笑った。ぐちゃぐちゃの顔から、お歯黒が見えてちょっと怖かった…。
ああ、やっぱりここは地獄なんだなぁと、わたしはしみじみと思った。子孫としては、ちょっとつらかった。
「よう、来てくれたのう。また来てくだされよ」という素順ばあちゃんを残して、私は現世へと戻った。