不思議な霊力の正体で決まる、あの世の暮らし…の巻【8話】
地獄の6畳間に百年近く暮らすばあちゃんを、どうやって助け出す?
黄金のワイヤー、黄金のワイヤーとつぶやきながら、よくわからないままに日常の仕事に追われて数日が過ぎた。
素順ばあちゃんは霊界の薄暗いところ、波の音が聞こえる小さな部屋に今日もじっと座っている。
何度か彼女の部屋を訪ねてみたが、いつも話題はおんなじだった。夫の愚痴、息子への不満、嫁の悪口。私がこんなにしてやったのに、あの人はどうで、この人はどうで・・・、私はなんでこんなに不幸なのだろう。神さま、仏さまさえ、私の味方をしてくれん。あんなに信心したのに、こんなところへ・・・と言っては泣き出すのだった。
聞いているうちに、私の心は現世へとワープする。これとそっくりな感覚、ずっと私は体験してきたと。そうなんですよ、素順ばあちゃんの話の展開、うちの母とそっくりなんですよ。さっすがご先祖様!!!
愚痴の多さ、私は悪くないのに、なのに報われない不幸な人生。という展開もしかり、そこに絡みつくじっとり&ねっとりしたネガティブな感情とエネルギー。DNAのなせるワザか、それとも黄金のワイヤーでつながっている先祖の想念が、現世の子孫たちへに影響を与えるのか?たぶん、後者の影響、大きいんじゃないか?
そうつまり、私たちはつながっている。あの世の膨大な数の先祖や過去世の魂たちと。
そどちらも数限りないほどにたくさんの存在で、そして、現世の私たちは嫌がおうでも、その影響を受け続けている。
先祖が変われば子孫が変わる? 先祖が地獄から救われたら、子孫も楽になる? でも、どうやって、このばあちゃんを地獄から救えばよいのだろうか?
そんなことを考え続けながら、何度か素順ばあちゃんのところに通っていたら、ばあちゃん救出のヒントを見つけることになった。
ギョエーー!!!蛇の赤い舌が、私の顔を…た、助けて~!
霊界の素順ばあちゃんは、死後もずっと、自分が信心してきた神と呼ぶ霊体を大切にしていた。
それが何かはよく見えない。神棚のようなものにばあちゃんは祈りを捧げて、子孫の幸福と繁栄を願っていた。
子孫たちに何かがあったとき、助けたいという強い願いで祈ると、ばあちゃんはその時だけ、波の音が聞こえる空間を抜けだし、現世のひ孫、ひひ孫のところへ飛んでくることができるらしい。
そうして迷子になったひひひ孫(私の姪)を助け出したり、入学試験に合格させたりしてくれた。
ばあちゃんが、祈っている姿を後ろから見ながら、私は意識のスイッチを入れ、
チャネリングとかリーディングと呼ばれるやり方をスタートさせた。
その霊体は何?と、意識を合わせていく。白いもの…
ヌメッとした肌。やわらかい感じ…色の白い女性? いや、違う…
そう思った瞬間、私は、ギョエーーー!!!と大声をあげて、座ったまま飛び跳ねた!
だって…
ありえないよ…!!!!
白い大蛇が、いきなりドアップで登場して、赤い舌でペロペロと…私の顔を舐めそうだったんだもん!!
ばあちゃんが、何事かと振り向いた。
私はとてもじゃないけど、そのままその場にいられなくて、「急用を思い出したんです。とにかく、急いで帰ります!!!」と、転げるようにして、ばあちゃんの家を出て、ミスターのいる霊界映画村にワープした。
蛇だったんだ。ばあちゃんの霊体って。
白い大蛇か…。
不気味だった…。
あの蛇が、私たちの願いを叶えてくれてたの??
と、答えの出ないつぶやきを繰り返しながら、私はミスターのところへ向かってトボトボと歩いていった。