知らないうちに魔物に使われていたのね、私…の巻
「もう地獄から抜けたい」って、ばあちゃんは思ってない!?【11話】
100万年、大蛇に絞殺され続けても、ばあちゃんの罪は消えないの? ばあちゃんは、どれほどにひどいことをしたというの?? ばあちゃんは、大蛇の被害者じゃないの???
地獄って、不条理じゃん。あの世って、不条理じゃん。むちゃくちゃじゃないの~~!!!!
「だから、地獄っていうんだよ」と、静かにつぶやく、ミスターの声がした。そして、さらにその声は続いた。
「じゃぁ、じゃぁ、真実って何よ! 悟るって、どういうことよ!」
「ばあさんが、地獄にいたいと望んでいる。それが真実。そのことを腹の底からわかって、もうここから抜けたいと思うことを悟るというんだ」
「なによー、それ! わけわかんないわよー!!」と、私がキレたとき。私とミスターの会話が全く聞こえていないはずの大蛇が、ばあちゃんに喋りかけた。
「お前がオレを裏切るなら、お前の家族がどんな目に会うか…。わかってるよなぁ」そういって、ばあちゃんの顔を赤い舌でベロリとなめた。
「お前が呪いをかけた人々のように、財産を失って野たれ死んでもいいのか? 娘を売ることになってもいいのか? 何をしても運のない貧乏人になって、一生を終わってもいいのか?」
「いやです。困ります。私の子孫たちをそんな目に会わせるわけにはいきません…」
「だったら、どうする?」
「あなた様を神と崇めます。そして、子孫たちにもそれをしっかりと伝えます。あなた様のエネルギーが枯れないように、子孫を通して人々から奪ったエネルギーをあなた様に渡し続けます」
ガーン!!!!!!!
必死の形相で大蛇にそう伝えるばあちゃんを見ながら、私はとうとう本当のことがわかってきた。
母はいつも裏庭の「みぃさん」と呼ぶ、蛇神さまの小さな祠に、卵とお酒をお供えしていた。何かあると、その前で祈っていた。
そして、母も、私自身も、この人に腹が立つ!と、思い続けると、その人の人生が上手くいかなくなることを何度も経験していた。
私も…そうだったんだ…。と、かなり愕然とした。
新入社員だった頃「厳しい先輩がいなくなればいいのに…」と思ったら、その先輩はすぐに会社を辞めた。得意先の社長の一言が気に入らなくて「バチが当たればいいのに…」と思ったら、その社長の会社は3か月後に倒産した。
どちらも偶然だったかもしれないけど…、こうして白蛇の化け物を目の前にすると、とても偶然だとは思えなかった。
呪いだよね。私も蛇の呪いに加担してたんだ…。と思うと、なんとも言えない気分だった。
蛇とばあちゃんは、互いの欲望?の赤い血管が絡みあっていた。
ばあちゃんは今は、静かに長火鉢の前に座っている。
穏やかな、いつものばあちゃんだ。
私はそのばあちゃんと大蛇をリーディングモードで見てみた。
ばあちゃんの神棚とその向こうにいる大蛇から伸びた赤い血管のような木の根のようなものが、ばあちゃんの全身に絡みついていた。
首にも、腹にも、細い腕から、指の先まで。
胎児が母親とへその緒でつながるように、蛇はばあちゃんとつながってエネルギーを吸収していたのだ。
そして、ばあちゃんから伸びる赤い血管のようなものもあった。
それは…
なんと…
ばあちゃんの体と大蛇を繋いで、蛇の体に絡みついていた。
ばあちゃんもまた、蛇の霊力を欲していた。我ら子孫の幸せのために無くてはならないものと思っていた。
ミスターの言ったとおりだ。ばあちゃんはどんなにひどい目にあわされたとしても、大蛇の力をほしがっていて、大蛇とつながり続けることを望んでいた。